第5回
一般教養科目公開講座
於:SAYAKA大ホール
平成26年10月16日

世界のウオーキング事情について
〜英国コッツウオルズを歩く旅から学ぶもの〜




一般社団法人 日本ウオーキング協会 専門講師 主席指導員
畑中 一一(かずいち)

  

 

講演要旨

“歩くことは人の動作”の原点…。“人の進化や文化”の原点ともいわれます。
20世紀後半から技術文明、わけても車社会への過度依存や、生活様式の急激な変化に伴い、人々はかつてほど歩かなくなりました。その結果、何がいま・・・。

 

 1・<いま、なぜウオーキングなのか>
 “歩く”ということは、私たち人間とって食べることと同様、生きていく上で大変重要なキイワードです。「歩」と言う字は「止」まることを「少」くすることとも言えます。「歩くこと」から私達はさまざまな事を経験し、学び、何かを得ることで、進化を続けています。俳聖・芭蕉は生涯のほとんどを歩き続けました。
 人間は「霊長類」の中でも飛び抜けた頭脳と思考力をもつ「ホモサピエンス」とも呼ばれています。私達はおよそ今から500万年前、類人猿(チンパンジー)から進化したと言われています。この進化の大きな違いは大別して4足歩行と2足歩行とも言われ、進化の上で大変重要な意味があります。人間は2足歩行することで手が自由になり、思考能力が刺激をうけ考える脳が発達しました。私たちの祖先が二本の足で立ち、歩きだして約450万年が経過した、今からおよそ50万年前には世界の各地で「原人」と呼ばれる祖先の出現は、皆さんもご承知の通り火の使用や、雨をしのぐなどようやく現代人に一歩近づきました。さらに脳が発達し、モノづくりから文字を生み出し情報の伝達から文学、芸術の領域へ。100年前には日本に米国から車が入ってきました。
 ここが人と猿との決定的な違いだと思います。原人の時代から50万年が経過した今、私たちは、パソコンを使い、新幹線をつくり、月にも行き、驚異的な進化を遂げましたが、チンパンジーには、それほど大きな進化が見られません。ここで年代の長さを判りやすくするために、500万年を50mとすれば、50万年は5m、5万年は50cm、5000年を5cm、100年はわずかの1mmとなります。皆様もご存じのとおり明治末期以降のこの100年、この「1mm」が、急激に変化しました。モータリゼーションの発達や瞬時に世界を飛び交う情報ネット。予想を超える災害等、今までの物差しでは測れないことが、いま日本や世界の各地で次ぎ次ぎと起こっています。「いま、地球も人も何かが、どこかがおかしい・・・」との思いに駆られるのは私だけでしょうか。
 こんな時代だからこそ、今こそ、ウオーキングを・・・。 いま一度「人」の原点を振り返って「歩く」と言うことを皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。「歩くこと」の果たす役割の一つは「体を運ぶ、移動する」と言うことですが、現在は歩くことの代わりに、体を動かさなくても、車や電車、空の便などを使うなど、移動手段はいくらでもあります。
 しかしこれらに頼りすぎるとどうなるでしょう。生活習慣病への近道にもなり、体力も衰える。もう一つ大事なことは、「歩くこと」で、いろんなものに出会えること。現代の過密な暮らしの中では、自然や歴史、本物の風景、モノとの出会いが少ない。それが長時間続くようになるとどうなるでしょう。歩くことの大きな効果は、大別して二つあります。一つはまず体が元気になる・・・。二つ目は「出会い・・・」。自然や人、街やモノとの出会い、ふれあいから五感が養われ育まれることです。五感は人・ヒトのみが「感じることできる優れた感覚」。今でも忘れませんが、子供のころ露にあたった新鮮でおいしい朝のトマト・・・。ファーストフードではこの感覚はなかなか体感できません。都会の日常の暮らしからは、本物に出会うことが段々、減っていくようです。
 更に、効果という点では、「歩くこと」で、体の姿勢を正常に保つことができます。「直立歩行」することで背骨が安定し元気になります。車に乗ると足腰を曲げた状態になり、どこかで歩くとか運動を取りいれないとあまり良ろしくない。人類がこれまでつづけ、果たしてきた「歩くことの効用」。これからも大事にいてしていきたいものです。厚生労働省も「毎日1万歩、歩くこと・・・」を奨励しています。

 私は北陸、福井県の越前市の田舎で育ちました。毎年、国が発表している子どもの学力、体力の調査結果では、福井県、秋田県と言った田舎を持つ地方が連続して順位が高く、大阪府は最下位に近い。この要因は何か? 私の田舎は今でも、大家族というか祖父、祖母と同居するか、近隣に住み孫たちとも普段から接する機会も多く、なかには地域ぐるみで子供を見守るコミニュテイが自然なかたちで育っているところもあると聞きます。都会の核家族と自然たっぷり、田舎の同居や近隣家族とは何が、どこが違うのか? 家族や近隣をも含めたコミュニケーションの連帯の好循環が要因とも言われますが「子どもは未来を担う国の宝」。いま、ようやく国を挙げて「地方創生の時代」に取り組む時がきました。

2・<世界のウオーキング事情>
 日本のウオーキングは、まだ歴史も浅く、ようやく50年を経たところですが、現在「健康のため・・・」という健康志向型と、「ウオーキングとは・・・」という指導型が主流です。でもヨーロッパでは歴史も古く紀元前5世紀にはロ−マ帝国が英国まで侵攻した軍の行進。中世に入って宗教者の巡礼の旅。音楽家や画家、作家の創作の旅など「人生≒歩くこと」からさまざまな変遷を経て「歩くことで生きる、考える・・・」へと進んで「健康のため・・・」を、第一義的には考えないようです。日本でも生涯をかけめざす俳句のために歩く旅をつづけ、御堂筋で亡くなった俳聖・芭蕉。明治から昭和にかけ日本を歩きつづけた民俗学者・「歩く巨人」といわれた宮本常一など少数派もいます。

 また、ヨーロッパで始まったマーチというウオークの祭典があります。戦争(第2次大戦)が終わって兵士が、自分の故郷で行進する。故郷の人達は兵士の帰還を祝し大勢の人達が歓迎、一緒に歩き音楽を吹奏し楽しむ。今オランダの「歩くオリンピック」と呼ばれる「ナイメーヘン国際フォーディマーチ」では、世界50ケ国から毎年4日間で約50万人が参加し、開催は96回を数えています。日本はまだ、そこまで至っておりせんが埼玉の東松山市で開催の「東日本スリーディーマーチ」は、公立小中高校の講堂と運動場を開放、貸布団を借りて講堂で宿泊、運動場ではうどん、餃子等の店も出し、10万人規模の参加者を歓迎するイベントに成長しました。オーストラリアのチロル、地中海、ニュージーランドのロトリア等観光地を歩きながら、楽しむと言う、ウオーキングも増えています。こうした各国から大勢のウオーカーが、年に一度の“集い”のほか、普段からウオーキングに軸足を移しウオーキングライフを楽しむ人たちが近年、世界で、日本でも増えつつあります。

3・<ウオーキングは21世紀のライフスタイルをリードする>
 1997年、富士山の麓で「ウオーキングサミット」開催されました。世界各国からウオーカーのみならず、医師や学者、学生、画家、詩人、政治家等多数参加。「ウオーキングは21世紀のライフスタイルをリードする」が、採択されました。その第3条で「現代、技術文明に益々依存する今日の生活習慣の中で、ウオーキングは21世紀をリードする最も重要なライフスタイルとして、推奨すべきである」と宣言されました。これが今日、各国に根強く浸透し定着、ウオーキング人口が増加しています。
 日本でも、総理府統計によると20歳以上の人で、この1年間に、週2回以上ウオーキングをした人が40%〜45%と言う結果が出ています。20年〜25年前はかなり低位置にあり、成熟したスポーツではなかった。それがグングン増え、これからやりたいスポーツとして、ウオーキングが45%に増加しています。ウオーキングがいかに国民に浸透し、健康に良い、これからも続けようとなってきたことの表われとも言えます。
 歩くと言ってもピンからキリまであります。オリンピック種目の50km競歩。これは特殊なアスリートの世界です。私達の「ウオーク」は、ゆっくりと歩いて楽しむ。自然をたっぷり楽しむと言ったもので、最近、この傾向が増加しています。
 日本人の平均寿命が男性80歳、女性88歳と発表されましたが、もう一つ健康寿命と言うものがあります。男女ともに70歳を過ぎた頃から足腰が痛い、体に異常が出てくる年齢となり、男性73歳、女性76歳と言われています。体に変調をきたし、統計によれば医者にかかりだして、男性で7年、女性で12年後に平均寿命を迎えることになります。最近、厚生労働省は「健康寿命を自助努力で1年延ばしましょう」をアピール。私も各地で「歩いて健康になろう、楽しく長生きしよう」と呼びかけています。

4・<英国で一番美しい町や村々 コッツウオルズを歩く旅>
●コッツウォルズ:(Cotswolds) は、イングランド中央部に広がる標高約300mのなだらかな丘陵地帯でイングランドの中心とも呼ばれます。 コッツウォルズは「羊の丘」という意味で、特別自然美観地域 (Area of Outstanding Natural Beauty) に指定されています。

4−1 歴史:コッツウォルズは4000年とも言われる永い歴史を持ち、羊毛の交易で栄えました。現在も、古いイングランドの面影を残した建物や酪農風景を見ることができます。19世紀に入り、その景観を活かした観光が脚光を浴び、近年多くの人々が訪れるようになりました。黄色みを帯びた「蜂蜜色の石・(ライムストーン)」と言われる石灰岩「コッツウォルズストーン」を使った建物群が独特の景観となっています。

4−2 コッツウォルド・ウエイ:南北に縦断する「歩く国道・102マイル・164km」を幹線道として縦横に、くまなく通じる歩道(フットパス)と標識、心温まる宿(ユースホステル、B&B)、I・C(インフォメーションセンター)、郵便局など「歩く旅」を細部にわたり補完する国営地図の整備。2004〜06年、毎夏渡英、延べ33日、延べ約480kmを歩きました。
 コッツウォルズの歴史や自然、環境保全の現状などをたっぷり見聞、、今後に役立つスタデイウオークとなりました。近年はBS放送(NHK)でも紹介、改めてコッツウォルズが注目されだしました。しかし真のコッツウォルズを確かめようと思うなら自分の足と目で、中央丘陵部を縦横断するフットパスウオークが最良・・・。幾世期を経ていま尚、中世の香り漂う田舎の小さな町や村の自然や歴史、それを守り続ける人々の暮らしにカルチュアーショック・・・を受けました。

4−3「歩く権利法・Right of way」RA:歩く権利とは「他人の所有地を歩くために通り抜けることの出来る権利」を言い1932年に法制化された画期的は法律。これにより「歩く道」の環境整備が進み、ウオーキングが奥深い生涯スポーツとして普及が更に高まりました。環境保全に尽くすRAの役割、幅広い活動は「ウオーキング大国・英国」と言われるゆえんでもありますが、今回の「歩く旅」から数多くの事を学ぶことができました。RA(Ranblers Associaition 英国のウオーキング・環境保護団体)

4−4 英国の歩く専用道と素晴らしい国営地図:英国には歩く専用道がしっかり保存されています。これは英国全体に言えることで、英国全土に約700ルート、総園長距離約20万kmにもなり、これがこの国の財産となっています。高速道路は作ればできるが、これらの歩く道は、何千年もかけて、羊・馬・人等が通ってできた道なので、現状変更など、出来ないと言う思想がいまも強く息づいています。
 私たちが大変感心したものの一つに、国営の地図があります。至れり尽くせりで、ユースホステルや郵便局、青い線で示した歩く国道(ナショナルトレイル)まで細部にわたり掲載され、旅をするのに大変便利な必需品です。これがあればどこでも行くことができます。この地図の赤い線が車の通れる道。青い線が「ナショナルウェイ」と言って「歩く国道」です。コッツウオルズに限って言えば100ルートの道があれば、車の通れる道はせいぜい20ルート位しかありません。日本では府県を縦断する歩く専用道など、まだ、全くありませんが、本日、英国の1/25000の地図を持ってきました。歩くことの情報について、ほぼ必要な全てが網羅されています。この大きな地図が真っ黒になるほど、事前に机上で調査したことを書き込みます。地図上のどんぐりマークは歩く国道で、それぞれ標識bェ記されています。これを確認すれば、自分の居場所がわかります。但し、コンパスなどを使って、位置確認をする技術は必要です。

4−5 ツーリスト・インフォメーションセンターの役割:今回、国営のツーリストインフォメーションセンターには、行く先々で情報を提供していただき大変助かりました。しっかりしており、道案内と「ここはぜひ、こちらに行った方がいい」などタイムスケジュールと併せ的確なアドバイスに大変助かりました。


4−6 ナショナルトラストについて:自然や街並みや歴史的建造物など、「国民の(あるいは世界の)財産として次世代へ引き継ぎたいが、所有権や法的・経済的な問題により維持が困難なもの」を守り、次世代へ引き継いでいくことにあります。※コッツウオルズでは南のバースをはじめ北のチッピングカムデン他で何ケ所もナショナルトラストや標識を見かけました。

5・<歩く旅(スタデイツアー)は 南端のバースから北へ・・・>
5−1 世界遺産の町・(バース・Bath)
 コッツウオルズの南端に、バースと言う町がありますが、紀元前5世紀ローマ帝国時代、イタリアから進攻してきた将校たちが、この地に基地を構え「ローマ風呂」を使ったことから転じて「バース」となり、ローマ風呂が今も現存し世界遺産にもなっています。バースは南北に102マイル(164km)の歩く国道「コッツウオルドウエイ」の南の起点。私達もこのウェイを中心に南から北へ。事前の机上調査が役立つかチエックしながらスタート。今回の歩く旅を「スタディツアー」と呼び、事前に英国発行の1:25000、地図を頼りにコースやルートの調査、宿舎(ユ−スホステル&B.B)や昼食や水を調達する郵便局の確認など。手配から自分たちで始め、地図を頼りに目的地から目的地へと歩く旅をつづけるのも楽しみの一つ。1年目は女性も参加、旅を味わう気分でしたが、2年目からは男性だけ5人の参加で、結構重いザックを背負って1日に約25〜30kmを歩く旅。けれど英国の歩く文化を存分に体感しました。グループの旅でしたが、歩くときは1人ずつに別れ各自が別々のルートを歩き、後で記録を交換します。従ってスタディツアー終われば5通りのルートを旅したことになりこれも楽しい試み。こうして南のバース(Bath)から北の終点・チッピングカムデン(Chipping Campden)まで、102マイル・164キロ。途中で6ケ所ほど連泊をして東西に足を延ばしたりした私たちの3年間のスタデイ・ツアー日程は概ね下記のとおりです。

第1次 コッツウオルズ・スタデイツアー 2004年6月16日〜25日 10日間
第2次 コッツウオルズ・スタデイツアー 2005年6月 5日〜 4日 10日間
第3次 コッツウオルズ・スタデイツアー 2006年7月 3日〜15日 13日間

上記のように最も気候のよい6〜7月を選び3年間で33日、渡英しましたが、往復の機内日程、12日を差し引きウオーク日数は21日。南北に延びるコッツウオルド・ウエイ約170キロを8日、東西に訪ねておきたいところを8ケ所、210キロを11日、休養日1日、実質20日で約480キロのスタデイウオークとなりました。

5−2 雑誌社から取材を受ける (トマトン・Tomarton) バースを出てまもなく、この日の宿舎へ行く道を地図から探していると、英国の雑誌記者から取材要請の連絡があり、トマトンの丘で取材に応じることに。聞けば後日、日本の雑誌にも転載されるそうで、後日、日本語版・雑誌を見たら5ページの記事が掲載されていました。「このにこやかな男たちは歩くだけのために、はるばるイギリスにやって来た。それも何日と言う単位だ。牧場や田園風景の中、彼らはいったい何を考え、何を求めて歩くのか」そんな見出しで始まる内容の特集記事でした。

5−3 塀のない邸宅( チエルトナム・Cheltenham)英国の昔の庄屋の大きな邸宅マナーハウス。芝生を刈られよく整備されていますが、柵、塀が一切ありません。どの家も解放的で、私たちも庭を横切って土産を持って行きスコーンと言うお菓子と紅茶を頂いたこともありました。
 家はライムストーンと言う石造りで最は白ですが、年と共に色が蜂蜜色に変わってきます。手入れにもよりますが、新築よりも古い家の方が高価なようで、手入れの行き届いた古いものほど価値がある・・・とはいかにも英国らしい。ガーディニングも好きな国民で、庭には何時も綺麗な花が絶えることなく、全て森や野山に行って採ってきたものを庭に植えて園芸を楽しむのだと聞きました。

5−4 移動は馬か徒歩で( ペインズウイック・Painswick)時代は移り変わっても鉄道、高速道路は町や村の近くには通さず、近くへの移動手段は馬か徒歩が主流です。近代文明に染まることを好まず、ほぼ中世のまま残ったこと自体、驚きですが、かたくなに古き良き英国スタイルを守りつづける姿勢には、この地に住む人たちのこの土地を愛する情熱が脈々と受け継がれてきたからだとも言われます。
●5−5 この子らは将来どんな大人に(クリーヴヒル・Cleeve Hill) クリーヴヒルの朝、宿舎を出てすぐ、8時40分頃、丘を登ったところで馬に乗ってこちらにやってくる父と子に出会ったので「おはよう・・・」のあいさつ。7〜8歳くらいの可愛い坊やも元気に「Hello! Good Morning・・・」。笑顔の父子と会釈し2〜3分も歩いたろうか、前方から馬に乗った女性がこちらへ。にっこり微笑み前方を指さし駆けて行きました。父と子と母親と併せ、たった5秒前後の短い出会いでしたが、想像するに学校に行く息子と畑へ仕事に出る父が途中まで馬で一緒に。
 朝の片付けを終えたのでしょうか、少し遅れて馬に乗ったママが私たちに手を振り急いで二人に追いつくいつもの朝。しかし、この風土、この四季の自然、彩りの中ですくすくと育つ子は、将来どんな大人に成長していくことでしょう・・・ !

5−6 牧場に泊まる (ブロードウエイ・Broadway):牧場に泊まったこともありました。主人に「コッツウオルズを一言でいうと、いかがですか」と聞きましたら主人は「私たちが今ここにあるのは、過去のお蔭。だから過去を大事にして、その上に未来を築く。毎週、日曜の朝は家族全員で教会へ行く。これも何代も続いている。肥沃な土地、美しい自然、素晴らしい環境は、私たちが作ったものではない。1000年も2000年もかけて、先人たちの英知と努力が造りあげたものだ。それもよく見て帰って欲しい」と・・・。

5−7 ナショナルトラスト・カントリーホール(チッピングカムデン・Chipping campden)コッツウオルドウエイ、北の終点チピンカムデンは宝石箱のような美しい小さな村。民衆の財力で建てた教会。民家など重要文化財的な建物が沢山あります。かつて昔、物々交換が盛んだった時代、交易で賑わったカントリーホールもその一つ。いま、ナショナルトラストとして往時のままの状態で表通りに建っています。感心することは、破損も受けず落書一つもないこと。外部からたくさんの人も出入りするだろうに「これは凄い」と感心しました。建物の中は合掌造りなっています。「チッピングカムデンのマーケット」と書かれている上に「ザ・ナショナルトラスト」と書かれてあります。これが日本ならば塀で囲み感知器を備え、立ち入り禁止の標識が立つことでしょう。
 以上で「コッツウオルズ・スタデイツアー」の映像を見ながら “歩く”ことについて私のつたない話を聞いていただきました。おしまいに『歩く』という言葉を、日本と英国の辞書では、どうなっているのかをお知らせして本日の終わりといたします。岩波の広辞苑では「足を使って進んでいく」、「歩行」、「歩む」などが出てきます。しかし英国の「ウェブスター大辞典」では『歩く』を調べると「歩くことは早くはないが、高貴なる移動手段」と出てきます。「この国にしてこの言葉あり・・・」。何という歴史の蓄積と文化の重み、ウオーキング大国・英国ならではの含蓄のある言葉に深く感じ入りました。

6・<3ケ年・延べ480キロのスタデイツアーを終えて>
 
2004年6月から毎夏3ケ年、延べ33日、延べ480キロの「コッツウオルズ・スタデイツアー」を無事終えることができました。旅の手配から事前調査、実踏、報告まですべて自前で隊員が行った旅。帰国後RA(英国ランブラーズ協会)への報告、日本ウオーキング学会誌への年次報告他と併せ国内外のカントリーウオークが、いま改めて見直されつつあることは、嬉しい限りです。また今回は講演の機会をいただき誠にありがとうございました。

本稿は紙面の都合もあり、2時間の講演内容を圧縮、要旨を取り纏めました。どうぞ趣意をお汲み取りいただければ幸甚です。               (おわり)




平成26年10月 講演の舞台活花



活花は季節に合わせて舞台を飾っています。


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