平成17年度
熟年大学
第6回
一般教養公開講座
於:SAYAKA小ホール
平成17年11月17日
身近なクリーンエネルギー
大阪府立大学 助教授
津久井 茂樹 氏
講演要旨 資源の少ない日本では、省エネルギーこそが21世紀の課題です。 本当に節約すべきエネルギーとは、何か? 燃料電池や太陽電池、バイオエネルギーなの現状と将来を考えます。 |
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1.エネルギーのいろいろ 私たちの生活は、ずべてエネルギーを利用しています。 食べ物は生体内で生きるエネルギーとなり、ガソリンは自動車のエンジンの駆動エネルギーとして、人や物の移動に利用されます。 さらに家庭では、ガスや電気を熱エネルギーとして利用し、調理や冷蔵庫や冷暖房による快適な生活を送っています。 これら、利用されるエネルギーは、地球上に降り注ぐ太陽エネルギーや化石燃料、水力、風力、熱エネルギーから得ています。 この中で、熱エネルギーから得られる仕事には限界があり、最も利用価値の低いエネルギー形態です。 そのため、できるだけエネルギーを熱に変換しないような利用が求められます。 2.地球上で利用できるエネルギー 太陽から流入するエネルギーは莫大で、地球上で消費される全エネルギーを、僅か40分で賄うことができます。 その殆どのエネルギーは、地球の保温と植物の光合成、鉱物の形成などに間接利用され、僅かなエネルギーのみを直接利用しています。 3.エネルギーの利用 日本で利用されるエネルギーの受給は、石油、石炭、原子力等から得られるエネルギーの43%しか利用されていません。 しかし、中国を初めとするアジア諸国の経済成長のため、今後、ますます化石燃料が使用されることが予想されます。 さらに2400年までの化石燃料の受給では、石油や天然ガスは数十年で供給量が需要量を下回ることが予想されるため、未確認埋蔵量を採掘しない限り、エネルギ需要を満たすことはできません。 4.地球温暖化 地球温暖化は、今から積極的に取り組むべき問題で、今後100年間で6度近く、平均温度が上昇し、それが原因で @洪水や旱魃の増加が2倍、 Aマラリヤなどの感染症の蔓延、 B動植物の15%〜30%が死滅、 C海水面が1メートル程度まで上昇することなどが危惧されています。 地球温暖化は、2000年以降急上昇を示しますので、その原因となる二酸化炭素濃度の上昇が問題です。 地球温暖化を食い止めるには、少なくとも100年前から取り組む必要があります。 つまり、2100年に生きる全ての生物が、元気で暮らすためには、現在における取り組みが重要なのです。 5.クリーンエネルギー 地球温暖化、汚染の軽減の問題解決には、化石燃料の利用から脱却し、太陽エネルギー利用や、水素サイクル、バイオマス利用、風、水力利用などのクリーンエネルギー利用を目指す試みがなされています。 クリーン(新)エネルギーには2種類あります。 @再生可能なエネルギー(自然エネルギー・リサイクルエネルギー) A従来型エネルギーの新利用形態 自然エネルギーは、太陽光発電、熱利用、風力を利用したものであり、リサイクルエネルギーは、家庭からでるゴミや木屑などのバイオマスや、大気や河川水の温度差を利用します。これらのエネルギーの特徴は、 @環境に優しいクリーンエネルギー A石油の消費量の削減 B身近なエネルギー C多種多様な利用が可能 などであり、今後のさらなる研究開発が必要な分野です。 この中で、実用化レベルに達している太陽エネルギー利用とバイオマスの例を紹介します。 5.1 太陽エネルギー利用 太陽エネルギーの長所は、クリーン、無尽蔵、間接的には風力として利用されます。 短所はエネルギー密度が低く、昼夜の変動と地域差が大きいことです。 平均的な家屋の屋根の20%(約25u)に太陽光発電設備を設置すると、年間一人が使用するエネルギーの約33%を賄うことができるのです。 5.2 バイオマス 太陽エネルギーを利用して、水と炭酸ガスから合成された有機物をバイオマスと呼びます。これは地球上の植物や樹木であり、産業革命までは木炭として利用されたエネルギーです。 バイオマスの原料は、 植物系 ⇒とうもろこし、サトウキビ、木屑などが利用され、 廃棄物系 ⇒糞尿や汚泥、生ゴミ等が利用されます。 これらの原料は毎年栽培される量を利用する限りにおいて、余計な二酸化炭素を排出しないため、再生可能でクリーンなエネルギーです。 バイオマスは、高温の水蒸気や微生物を利用してメタンガスやアルコール、水素、燃料を作製します。 6.終わりに クリーンエネルギーは、一つ一つのエネルギー密度は小さくても、多くの場所でエネルギーを作ることが出来るため、実用のエネルギー源として、十分対応でき、太陽光、バイオマス、水力の三つで、需要の50%を得ることが可能です。 今後のさらなる実用研究、および技術革新が必要な分野です。 |