平成15年度
熟年大学
第5回
一般教養公開講座
於:SAYAKA小ホール
平成15年10月16日
【21世紀の家族】
講師
大阪府立大学社会福祉学部
助教授
菰渕 緑 氏
現代における家族は、過去に経験したことのない大きな変化に見舞われています。 そのなかでどのような夫婦関係を築き直してゆくか、家族の役割とは何かなどについてお話します。 | ||||
講演の大綱
21世紀を迎え社会事情の変化に従って、今家族が相当のスピードで変化して来ています。 そこで、
1.これまでの家族はどのように変化して来たかを、歴史的に振り返ってみます。
●大家父長制家族 古代社会に典型的 家父長の絶対的権力
農耕中心の産業構造に見られる形です。
●小家父長制家族 中世都市に典型的 家父長の権威は強い
例えばドイツの手工業ギルトの社会で典型的に見られ
家族の構成員が少なくなった形態
●現代民主主義的家族 特にアメリカで発達
産業革命を契機として米国で典型的に発達した家族
つまりこれが核家族の始まりです。親の権威の相対的弱化。
●21世紀以降の家族
核家族がさらに変化したものです。
2. 家族の定義の変化をみてみましょう。
(1) 「家族とは夫婦関係を基礎として、親子、きょうだいなど近親者を主要な構成員とする、感情融合に支えられた、第一次的な福祉追求の集団」です。
Well-being (安寧)→幸福を追求する集団が家族の目標
(2) 「家族とは、夫婦、親子、きょうだいなどの少数の近親者を主要な成員とし、成員相互の深い感情的包絡で結ばれた、第一次的な福祉追求の集団」です。
家族構成の中で夫婦関係のみを強調しない。
感情的包絡というのは愛情とともに対立や葛藤を含むのが
家族だとする捉え方です。
3.夫婦関係と親子関係とどちらがより基礎的か?
例えば
インドのナヤールの家族→夫婦関係の位置づけを欠く
インド独特のカーストの一つに見られるユニークな生活形態。
タラバードと呼ばれる世帯。 伯父叔母・母・娘・l姉妹、娘孫の同居世帯の家族形態だが、父、夫の存在概念が薄い訪問婚形の母子集団。
イスラエルのキブツの家族→親子の生活分離
最初は集団農場の形態で、現代社会において人口的に創り出される形態。 その特徴は全てが共同化されている事で、労働や食事を含め日常の家事が共同で行われている形。 そのユニークな面は、親子の生活分離。子供は生まれた時から親とは別の子どもの家で生活する。
4.家族の機能の変化 家族の機能を二つに分けて見ると、
本来的機能→愛情、生殖、養育の機能
時代や社会によって変らない普遍的家族
歴史的機能→経済、保護、養育、娯楽、宗教の機能
時代的、社会的に変化して行く機能
●経済的機能の変化→日用品や食物の生産を家族で行う事から、生産活動は家族から分離。 消費単位への変化。
●保護的機能とは、国家や警察・消防署が変わりに守ってくれる形で家族は行わない。
●教育機能も家族から専門教育に移譲。
このように「家族は諸機能を家族外に譲り渡すことによってますます愛情や友愛などの感情的要素に基づいた夫婦、親子の相互体になってきている」のです。
5.パーソナリティの形成
家族は人間のパーソナリティを創り出す工場である。
ニューギニアチャンプリ族の例 男らしさ女らしさの逆転
力強くたくましい存在や優しくか弱い存在が逆転した形。女性が全ての経済権力を握っており、男性は宗教的なものに使う彫刻や彫り物をしており経済的活動にはタッチしない。 パーソナリティも社会によって男女が規定されている。
6.家族の多様化
これまで色々な家族のさまざまな形を例として挙げたが、
現代社会に戻って今起こりつつある家族の変化をみてみましょう。
現代社会では、共通した家族のイメージを持つ事は困難になり、従来の家族観念ではとらえきれない新しい形態の噴出。
離婚の増加→ひとり親家族の増加。シングルズの増加。欧米に多い同棲カップルの増加。 これは若者だけでなく、中年の男女にも見られる形態。多様化=選択肢の増加を意味します。
このように伝統的な核家族でない、いろいろな家族や生活形態が増加してきた事によって、これまでシングルや同棲家庭、母子・父子家族は、従来は何か欠けたもの、正当でないものと社会から思われてきましたが、今の社会では、これらの形も逸脱形態でなく正当性を認められるようになってきています。
7.結婚の意味、結婚観の変化
従来の結婚が持つ「値打ち」が低下
結婚による束縛、、役割の増加など「コスト」が増えてきました。
結婚は当たり前のことでなく、選択の一つの問題になってきています。
8. オーストラリアの家族の一例
この項目スライド投影に付き省略
講演中の菰渕氏