本日配布資料の最初に「おっと危ない!間違っていませんか?あなたの食常識」と12項目あるがその中で正しいものに丸印を付けてください。
1: 毎日の食事に欠乏しがちな栄養素葉サプリメントや薬で補うように心がけている。
2: 風邪や疲労で体調のすぐれない時には普段以上に栄養になるものをしっかり食べる。
3: 玄米食は身体に良いので毎日の主食を白米から玄米に変えた。
4: 1日の活動開始のエネルギー源として朝ごはんはしっかりとる。
5: コレステロール値が高いと心筋梗塞になりやすいのでコレステロール値を下げる薬を忘れずに飲んでいる。
6: 植物油は体によいのでバターよりマーガリンを使っている。
7: 水を一日2リットル以上飲むと血液サラサラ効果が期待できさらに美容にも良いと聞いたので続けている。
8: 牛乳はカルシウムの宝庫であるので骨粗しょう症の予防に毎日欠かさず飲 んでいる。
9: 油脂を多く摂るとメタボ体格になり成人病になりやすいので油物はできるだけ控えている。
10: 塩分を多くとると高血圧になると言われているので食事からできるだけ塩分を減らしている。
11: 焦げている魚や肉を食べると癌になる
12: 青汁を飲んでいる人は実年齢より若々しく生き生きと活動しているので早速始めてみようと思っている。
○はいくつ、ありましたか?
実はこれ全部間違いです。
今日はこのことについて説明する。体調の悪い時、健康長寿のためにどんな食材を選んだら良いのか?答えは一つではない。自分に合った適切なものを選んでいくことが重要である。
■東洋医学と西洋医学の治療方法の違い
体調の悪い時、東洋医学ではなく、西洋医学を受診し、結果薬をもらい、副作用で苦しんでいる人が大勢いる。普段、あまり知識を得ることの少ない東洋医学的をベースにして話したい。
東洋医学と西洋医学の違いは、西洋医学は血液・尿検査等の検査結果から、治療方法、投薬等を決定する。一方、東洋医学は各人の体質、生活習慣等を聞き、個別に投薬、治療を行う。
西洋医学と東洋医学の治療方法の違いを知ることは大切である。
漢方治療の有効な病態は、体質に起因した慢性疾患、急性上気道炎、風邪等。風邪には漢方が有効である。漢方には副作用はないが、即効性はない、1年、2年と長く続けないと効果がないように思われがちだが、風邪に適切な漢方を用いると、服用後15分~30分で効果がわかる。うまく薬を選ぶ必要があり、風邪には漢方がとても有効である。
又、漢方は慢性感染症、機能失調に伴う疾患、自律神経失調症、諸種不定愁訴、女性の更年期障害、虚弱体質の改善、西洋医学で治療が困難な場合や副作用軽減の補助療法、妊娠中の婦人の病気、筋肉痛・関節痛・神経痛等にも用いられる。
西洋医学の得意領域は、急性感染症、コレラや赤痢等、抗生物質が必要な病気である。また救急医療、生命維持医療、外科治療、分析機器を用いた病態の把握等には有効である。
癌に侵された患者で「手術せず、東洋医学、漢方で治療できないか?」と漢方に頼る方もいるが東洋医学と西洋医学の特性を理解して、正しい治療方法を選択するべきだ。治療方法の選択を間違えると、先々の回復が困難になる可能性がある
■東洋医学と西洋医学の栄養学的観点からの比較
次に、毎日の食生活で、栄養学の観点から西洋医学と東洋医学的を比較したい。
西洋医学では、高齢者の1日のエネルギー必要量は、仕事量や運動量によって多少違いがあるが、男性は大体2000カロリー、女性は1800カロリーとされ、三大栄養源のタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル摂取量も規定されている。これには個人の体質・生活環境が考慮されず、画一的に規定されている。
東洋医学では、各人の体質、生活習慣、生活環境、気候風土等を考慮、自分に合った食生活を自分自身で選択してゆくことが必要とされる。100人いれば百通りの食べ方食べ物があるという考え方である。
体質を大きく2つに分けて、筋肉質でがっちりした体格の人=実証、痩せて弱々しそうな人=虚証、と形容しているが、それぞれに問題があり、東洋医学では、中間の体質=中間証が理想とされている。中間証になるように薬や食物で調節してゆくことを目指している。
実証体質の人はがっちりした体格で、仕事もできるイメージがあるが、このタイプの人は病院には行ったことなく、急に脳卒中、心筋梗塞等で倒れるケースがある。虚証の体質の人は、少し体調が悪くなるとすぐ病院に行き、体調管理に注意しているので、それが功を奏し、結構細く長く元気でいることが多い。
■東洋医学的に見て体質に合った食物とは?
では、両親から受け継いだ体質は生涯続くのか?というと実はそうではない。体調不良、環境の変化、ストレスなどで実証と虚証がいれかわることもある。また、暑がりの体質(熱証)と寒がりの体質(寒証)があり、日本人女性の7割が寒証タイプで、1割が熱証タイプ、中間は2割くらい。
熱証タイプの人は体を冷やす食材として、ゴーヤ、ナスと、昆布・メロン・パイナップルを、寒証タイプの人は体を温める食材として、ねぎ、しょうが、胡椒、クルミ、唐辛子などをつとめて摂るよう心掛けて、体質の改善を図るよう教えている。
寒証タイプの人は寒い時期、身体の芯から冷えているので、布団に入り、電気毛布で温めてもなかなか温まらず寝付きも悪くなる。その寒証タイプの人に好きなものを聞くと体を冷やす作用の強い「メロン、パイナップル」と答える。冬場だとみかんを風呂上り、こたつでテレビを見ながら五つも六つも食べて布団の中に入ると言う。これでは体が冷えてしまって当たり前。毎日の食べ物で自分自身が寒証タイプの体質にしてしまっていると言える。
東洋医学では食べ物にいろんな性質があるということを教えている。食べ物の性質を5つに分けてみていくと、①体を温めるもの②熱くするもの③冷やすもの④涼しくするもの⑤温まりも冷やしもしないものがある。各自の体質が火照り症(熱証)なのか冷え性(寒証)なのかを認識したうえで、それを修正するような食べ物を選ぶことが必要である。
一方、東洋医学では食べ物の味は、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の五つに分類され、それぞれの味の性質と対応する体内の臓器、器官について説いている。体を冷やすには苦い食べ物が有効で、夏の暑い時に苦い物を食べると体が少しすっきりする。酸っぱい食べ物も体を冷やす作用はいくらかある。逆にピリ辛い食べ物は体を温める効果が強い。塩辛い食べ物はほんわりと体を温める。甘い食べ物は体を冷やしも温めもしない性質があり、この中には食べる量の多い主食が入り、米、トウモロコシなどがある。
自分の体質に合った食材選ぶ、これが東洋医学の教えである。食材の作用(温めるか?冷やすか?)を一覧表にした書籍が市販されている。例えばキュウリは体を冷やすので、冷え性の人は食べすぎに注意が必要。反対にシソやネギはピリ辛い味で体を温めるので、冷え性の人にオススメ食材と言える。食品の性質を紐解いて自分の体質に合った食材選ぶ。東洋医学の栄養学はこの考えで成り立っている。
■ 栄養分を補うためにサプリメントは必要か?
テレビでサプリメントのCMをよく見かける。その中で青汁のCMがあるが、青汁は体を非常に冷やすものなので、冷え性の人が飲むと、大変なことになる。CMではそのことはふれていない。
自分の体質に合った食材選びが重要であるが、情報が入手しにくい。興味のある方は書店やネットで調べることをお薦めする。
カルシウム不足を補うために、サプリメントに頼る傾向があるが、どの栄養素も摂取に適量があり、過度な摂取はよくない。例えばベータカロチンが癌の予防に効果的と言われ、一時市販のトマトジュース、野菜ジュース等ベータカロチンが添加されている商品が販売された。1缶にベータカロチンが50ミリ、100ミリ添加していると表示されていましたが、ベータカロチンの摂取量の安全域は3ミリ~20 ミリグラムで、これ以上の摂取は弊害が出る。近大の東洋医学研究所にいた時にベータカロチンの弊害を見るために妊娠したネズミにベータカロチンを大量に与える実験をしたことがあるが生まれた子どもが二分脊椎という背骨が2本できる奇形であった。体に良いといわれている成分でも大量投与すると弊害が出ることがわった。
また別の実験では、ベータカロチンが癌に有効と研究で立証されているので、肺がん予防を期待して、ベータ―カロチンの投与比較実験を行った。その結果、多く摂取した人は、癌になりにくいはずなのに、肺癌、前立腺癌が増加した。これは適量だと効果があるが、大量に摂取すると逆効果になるということを実証した実験結果である。
テレビで食の有効性、病気に対する効果を謳っているが、過度な摂取は弊害を招く。毎日の食事で欠乏しがちな栄養素をサプリメントや薬で補うと言う考えがあるが、私の個人的見解はサプリメントで摂ると過剰摂取の恐れがあり、体にとって悪影響をもたらす危険がある。だからサプリメントには頼らないでほしい。食品で同じものを沢山摂っても、必要な栄養素は体の中に上手く吸収されて余分なものは体外に排泄されるので、過剰摂取になることはほとんどない。
■1日3食きっちり食べるべきか?
朝食は、しっかり摂るべきだとか、体調が悪い時は栄養のあるものをしっかり食べて早く寝るのがいいと言われるがこれは間違い。最近は食べ物が溢れ、食べ過ぎのため、弊害が出ている。たくさん食べると、消化器官は約8時間位働きづめで、消化のためにエネルギーが消費され、体調不良を修復することができない。
体調不良が絶食で改善したと言う一例をあげる。知人で営業担当の30歳のがっちりした体格の男性。サラリーマンで営業担当。毎日接待で大量に食べ、帰宅後即、寝るという生活を送っていた。ある朝、体がだるくて起きられない。腕や腹に湿疹が出て、悪い病気では?と相談に来た。治療方法として、30時間絶食、薬はなし。結果は良好。過食による体中の機能低下が原因だと考えられる。現代人は過食による体調不良が多い。人間は長い歴史の中で飢餓状態の期間が長く、飢餓には抵抗力を持っているが、飽食には弱い。
最近がん治療にもこの絶食療法が注目されている。がん患者を二つのグループに分け、片方のグループは絶食させ、放射線治療や抗がん剤を投与する。もう一方のグループは普通に食事を与え同様の治療をする。すると、食べながら治療を受けている患者よりも絶食したほうが治療効果の有効性が大きく表れた。絶食することにより、体内に食べ物が入ってこない状態をなんとかしようと体が一生懸命働いて、免疫力、抵抗力が上がり、癌に対しても抵抗力がついたものと考えられる。 長生きをするためにはDNA の先にあるテロメアをしっかりした状態にするのが大事と言われた。テロメアをいい状態にするには、絶食療法が一番である。
私が近畿大学東洋医学研究所で実験動物を使って漢方薬の有効性を検討した時の話である。普通実験動物の白ネズミの寿命は2年位であるが、その中でも遺伝的に脳卒中を発症しやすい種類がおり、平均寿命は10ヶ月で早死にする。 このネズミにいろいろな薬を与えて脳卒中の発症を遅らせ長生きさせるためにはどうすればよいかを見つけ出すための実験である。西洋薬も漢方薬もまずまず効果はあったが、何よりも早死にするネズミを長生きさせる一番効果が高かった方法は餌を減らすことだった。好きなだけ食べ放題で餌を与えたグループより、少なく与えたグループのほうが明らかに体調も良く生存日数は延長した。健康長寿のためには「腹八分目」の言葉はまさに的を得ている。
ペットとして飼っている動物は体調が悪い時、散歩に連れて行ったらイネ科植物の草を食べ、食べたものは吐き、与えたエサは食べずにうずくまり、眠り、そして回復する。動物は体調不良を改善するためには絶食してジッとしているのが有効であることを知っている。我々人間が動物から見習うべき治療方法の一つである。食べない健康療法を注目しても良いのではないかと考える。
■玄米に健康増進効果を期待できるか?
玄米が白米よりも栄養価が高いと思い込んでいる人がいるが、玄米は胚芽や外の皮、黒い皮の部分に強力な排泄作用を持つフィチンサンが入っている。フィチンサンが体内のミネラルや必要な成分を体外へ流し出す欠点がある。普段から玄米を常食している人は、ミネラル欠乏症になりやすく、又、カルシウムを対外に排出してしまうため、虫歯になりやすい。
玄米を炊く時、2~3時間水につけて炊く人が多い。玄米は水につけると有毒のアブチジン酸という発芽毒が出る。この発芽毒は2時間の浸水ではなくならない。この状態では有毒のアブチジン酸を一緒に食べていることになる。夜、寝る前に水に浸し、8時間以上おき、朝に炊くとアブチジンサンの害が減少する。又、玄米は白米に比べ食物繊維含量が多く胃弱、病後の人、子どもには適さない。
■血中コレステロールが高いと早死にするか?
血中コレステロール値が高いのは危険か?更年期以降の女性で体調不良の人は血中コレステロールが高いことが多く、医者からコレステロールを下げる薬を勧められる。昔は血中のコレステロールが200mg/㎗以上で高脂血症とか言われたが、今は250くらいでもOKと、科学的な健康常識数値が変わった。昔の情報に固執せず、新しい情報をどんどん取り入れて欲しいと。
コレステロール値の適正値は?桜美林大学大学院の先生が小金井市の七十歳の老人を対象血中総コレステロール値の低い順に並べ、4グループに分け研究したところ、普通よりも少し高目の人が一番の長生きで、低い人は癌になりやすく早死にという結果が出た。非常に高い300以上の人は問題だが、ある程度高い方が長生きである。多少高くても、元気で長生きであればいい。
鬱状態の人が増加しているが、老人と鬱について調べた。65歳以上の人を対象に血中総コレステロール値と鬱病との関係を調べたところ、総コレステロール値が低い人ほど鬱病になりやすいことがわかった。コレステロールは抗ストレスホルモンの原料になる。癌や鬱の引き金になるストレスに打ち勝ち、癌や鬱を誘発しないために、血中コレステロール含量はある程度の高さは必要である。
人間の体は60兆個の細胞からできているが、細胞の細胞膜はじめ、体の様々な成分にはコレステロールがなければできないし、抗ストレスホルモンをはじめ、様々なホルモンの原料となるため、不足すると体に支障が生じる。コレストロール値、男性で230mg/㎗~250mg/㎗が一番長寿である。病院で血中のコレステロール値が250でコレステロール値を下げる薬を飲むように言われるが、薬を飲むことによるメリットとデメリットをはかりにかけて考えてほしい。
■油脂を多く摂ることは体にとって有害か?
毎日の食事の様々な料理の中で油が使われるが、油を摂るとメタボ体格になると悪者扱いされている。しかし油自体が悪いのではなく、食用油の作り方に問題がある。食用油にはオリーブオイル、菜種油、ごま油と多くの種類があるが、油の種類はどれでもいい。大事なのは油の作り方である。
昔、油は布袋に入れ重たい石で押し、出てきた油を採っていた。この方法を「圧搾法」という。 圧搾法でできた油は、材料の中に含まれる栄養成分もそのまま含まれており、油の変性やべたつきが少なく体への負担も少ない。欠点は価格が高いこと。しかし、こういう油を毎日の食事に使ってほしいものだ。
現在市販されているほとんどの油の製法は「抽出法」でつくられており、その製造方法は、ゴマ、菜種等油脂を含む材料を熱し、ベンジンやシンナー等の化学溶剤と撹拌する。圧力を加えれば中の油はすべて化学溶剤の中に溶け込む。この化学溶剤に熱をかけて飛ばすと油が残り、これが抽出法で作られた油で、安い価格で販売されている。高温高圧下で製造された油には、自然界では存在しないトランス脂肪酸(狂った油)が含まれ体に取り込まれると様々な障害を引き起こす。
マーガリンはこの抽出油を使い、さらに化学変化で水素を付加することにより固形化させたものでまったくの化学合成品である。バターと似せてつくられているので、牛乳から採った成分が入っていると思われるが、乳成分ははいっていない。
喫茶店で出るコーヒーフレッシュも、化学溶剤抽出の植物油に色と匂いをつけミルクっぽくした合成製品の塊でひどい食品である。コーヒー、紅茶のミルクは牛乳を温めたものを出す店を探して行かれることをお薦めする。このような店は他のメニューの中にも添加物漬け食材や化学合成食品など使っていないはずである。毎日の自分の食べ物の選び方をちょっと考え直してほしいと思う。毎日のことなので、些細なことでも積み重ねると健康維持効果に貢献すること間違いなし。
昭和51年に小金井市在住の70歳の女性を対象に、油物を食べてもいいグループと、油物をできるだけ食べないグループに分け10年間追跡調査した。10年後、80歳時の生存率をみると、油物をたくさん食べてもいいグループ85%、油物はできるだけ食べないグループは72.3%。
油物の取り方が少ない人ほど生存率が低いという結果がでた。油物をたくさん摂ればメタボになる、成人病になり早死すると、常識として定着しているが、実験では全く違う驚きの結果が出た。
油、脂質は脳の成分の60%を占めている。毎日の食事で摂取した油脂で脳の組織がつくられる。脳の中でも記憶を司る海馬で食事から摂った油脂がたくさん使われる。良い油脂をしっかり摂取していれば記憶力を良好に保てる。物忘れがひどい時には良い油を摂ることをこころがけてほしい。
■「カルシウムを摂るためには牛乳を」という迷信
カルシウム摂取に牛乳が有効と信じて、毎日牛乳を飲んでいる人が多いがこれも間違い。カルシウム補給に牛乳というのは新興宗教みたいなもので、小学校の時から給食で牛乳を飲み、生活習慣になり、牛乳を飲まないと栄養素が欠乏してしまう気になっている。子どもが牛乳を飲むと背が高くなる、牛乳はカルシウムの宝庫と信じてたくさん飲む人がいる。体に良いと信じて毎日、牛乳を飲んでいるが夜中に喘息の発作が出て苦しんでいるという人から相談を受けた。牛乳をやめるよう伝えたところ、やめた次の日から喘息は出なくなった。牛乳は体内に水を溜め込む力がある。喘息は気管支が浮腫を起すので、必要以上に牛乳を飲むと体内に余分な水がたまり気管支が浮腫し、喘息が起こると考えられる。
カルシウム欠乏にカルシウム剤、サプリメントが市販されているが、摂取過多になり、逆効果となる危険がある。
日本の牛乳は決して良いものではない。市販の牛乳は殺菌温度が130度で2秒以上の高温で殺菌されている。ヨーロッパで市販の牛乳は低温殺菌。62度から68度で30分程殺菌する。低温殺菌の牛乳は乳酸菌が生きているので、暖かいところに1~2日置いておくとヨーグルトのように固まる。130度で高温殺菌された牛乳は有効な菌や栄養素がほとんど壊れている。高温殺菌の牛乳は、腸に有益な乳酸菌は死滅し、たんぱく質も熱変性してしまっているのでカルシウムなどの有用な栄養分を小腸内で吸収できない。カルシウムを摂るために飲んでいる牛乳の中のカルシウムは体内に取り込めずそのまま出てしまう。牛乳からカルシウムを体内に取り込むにはビタミン D が必要だが牛乳の中にビタミン D は含まれていない。最近、ビタミンⅮ添加の牛乳も市販されているが、カルシウムを摂るためには、ビタミンⅮを含んでいる小魚、海藻などを摂ればうまく体内に吸収される。
■水のみ健康法のうそ
水は1日に2リットル飲んだら美容と健康にいいと、宣伝されているが、湿度の高い日本でたくさんの水を飲むと体内から水が出ず溜まってしまう。体内に溜まるとむくみ、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、胃腸障害、冷え性、めまい等の症状が起きる。60代のひ弱な女性が、最近体の調子が悪く、体力もなく、立って歩くのも辛い、常に寝ていたい状態で、「漢方でいいお薬ありませんか」と相談に来た。話を聞くと水飲み健康法をしているとのこと。虚弱体質の人が一日2ℓの水を飲むと全部胃に溜まってしまう。横になって胃を押したら、ぽちゃぽちゃと音がする。虚弱体質の人は水を飲む量を控えないと体がガタガタになる。とりあえず水飲み健康法をやめ、4~5日して再受診するように話しその日はそのまま帰した。後日再受診されたその女性はすっかり元気になり何の薬も必要もなかった。こんな人がたくさんいる。特に日本は湿度が高いので皮膚から水分が蒸散しない。だから余分に水を飲むと胃に水が溜まり、胃酸が薄められ、食べ物が消化できず、栄養が吸収できなくなり、体力、食欲の低下と悪循環に陥る。体内の余分な水分は病気の温床となるので、余分な水は溜めないようにすることが大事。体内に水が溜まりすぎている人は、手がベタベタ湿って、足の裏からも水分が出る。汗をかいているわけではないのに歩いた跡、床に足跡がつくような人は水が多いということである。足や体の局部に浮腫みが出てそこに水がたまると冷え性になる。体内に水が溜まると、頬、舌も浮腫むのでついつい噛んでしまいそこが口内炎になる。
舌の大きさは元気な時は小さくて締まっているが、体力が落ちると大きくなる。鏡の前で舌を出して観察すると健康状態が推測できる。舌の周りに歯型がついている人は水分過多で体力が落ちている。その時は無理をせず、水を飲み過ぎないよう注意が必要である。花粉症も体内に水が溜まりやすい人がなり易い。体内の余分な水を除去すると花粉症は改善される。花粉症の東洋医学的治療法はアレルギー症状を抑える漢方薬「小青竜湯」がよく使われるが、胡椒、唐辛子等の香辛料をしっかり摂って、肺や鼻からの発散を盛んにし、体にたまった余分な水を呼吸器系から追い出すよう指導している。水飲み健康法で一時、もてはやされたアルカリイオン水は胃酸過多からくる不快な症状には多少良いかもしれないが、今や市場から姿を消した。何れにしても多湿な日本で多量の水分をとることは、弊害が多い。
■塩をたくさん摂ると血圧が上がる?
本日の一番のポイント「減塩」について。国立循環器センターのサイトで、高血圧患者「減塩すれば血圧が下がる」と言っている。医師も減塩食を勧める。減塩醤油、減塩味噌等減塩食品のCMが多く流され、誰もが「減塩したほうが健康にいい」と思い込んでいる。随分、古い研究であるが、アメリカの科学者が、10匹のネズミにたくさんの塩を6か月間投与する実験をした。その結果、10匹中4匹が高血圧症を発症した。この結果「塩分を取りすぎると血圧が高くなる」とされた。しかしネズミに与えた塩の量は人間に換算すると1日両手に一杯の300gを半年間摂取したことに相当する。現在はこの実験が疑問視され、塩と高血圧の関係は否定されている。それにも拘わらず、この情報が間違いだったことは日本では報道されていない。新聞も間違った情報を出しても「実は間違いでした」と報道すること、ほとんどなく、あったとしても目立たないところに小さく書かれているに過ぎない。別の実験でアメリカ、シカゴのノースウエスタン医科大学の医師が食塩の摂取量と血圧の関係について厳密に調査を行った結果、食塩摂取量と高血圧の発症率との関係はない、仮にあったとしても無視できる状況と結論づけた。この情報についてもほとんど報道されていない。塩が高血圧を引き起こす原因だとしたら、低血圧の人が塩を多くとれば血圧が上がると言える。しかしそういう話は聞かない。昔から、溶鉱炉で働く人等、汗を多くかくひとは、必ず塩を舐めながら仕事をしてきた。
1日の食塩の摂取量は10g以下とされている。血圧を下げるために、仕方なく塩分のないまずい食事を毎日とって、一体どれだけ血圧が下がるのか?逆に塩を控えすぎ、ミネラル不足になる方が問題である。骨や歯を作る材料のカルシウム・リン・マグネシウム、人の生命維持に必要なナトリウム、カリウム・マグネシウム・硫黄・鉄等は全て自然塩に入っている。良い塩とは自然塩のことで、専売公社で販売のナトリウ99.9%以上の高純度の食卓塩は辞めたほうがよい。仕事の同僚の女性が、毎日のようにこむら返りで痛みがひどく、小学校の時からずっと週に1回病院通いして、痛み止めなどの投薬治療を続けているとのこと。小学校から今までの普段の食事の内容を聞くと、家では自然塩は一切使わず、食卓塩をつかっているそうだ。たぶんそのせいでミネラル不足になっていたと判断し、対処法としてニガリの液を夜寝る前に耳かき一杯ぐらい飲むことを薦めた。それを実行したらその日から今日まで1日もこむら返りは出ていない。40年近く苦しんだあの痛みは何だったんだろうと不思議に思えるほど劇的に筋肉の痙攣、痛みがなくなった。こむら返りで苦しんでいる患者に医師は痛み止めを処方するが原因はミネラル不足によるものなので、自然塩に変えることと、痛みが出た時ににがりを飲むことを薦める。にがりは口に入れて15秒ぐらいで効く。価格もボトル一本で1000円程度と高価なものではなく、この量でかなり長く使用できる。薬ではなく食品なので、体にも害はない。こむら返りで苦しんでいる人に「にがり」を薦め、多くの方から感謝されている。ミネラルを補えるのは体の組成に近い天然塩だけ。自然塩は生命維持の機能として新陳代謝を促し、筋肉を働かせ、熱を発生させ、体内の電流、電導機能を持ち、体内の有害物質の解毒作用等がある。減塩を進めていくと無気力になる。江戸時代牢内で暴れる囚人には塩抜きの食事を与えていた。すると無気力になりおとなしくなったと言う話がある。塩が足りないとアレルギー、ガン、奇形の増加、病原菌に対する抵抗力が弱まり、認知症にもなり易い。塩の摂りすぎは高血圧になるという話は、どこからでたか不明である。普通、1日に1.5ℓ程の小便が出るが、小便を出すためには塩が13.5g 必要。塩分が少ないと小便が出にくくなり、体内に水が溜まり、東洋医学でいうところの「水毒」になり、いろんな症状が出る。塩分を控えすぎると大変なことになる。
100人に4~5人位は塩を摂ると体質的、遺伝的に血圧が上昇する人もいる。そんな人は塩分を少し控えた方がいい。自分が塩分を控えたほうがいいタイプかどうか?テレビCMや本に書かれてあることを鵜のみにせず、自分自身で実験してみると納得できると思う。すなわち、3~4日塩分多めの食事を摂り、その前後で血圧を測定するのだ。手ごろな価格で血圧計は手に入る。自分で実験した結果は、自分が一番納得できるものなので、血圧測定した数値の結果を見て自分にとって適量な塩の摂り方を考えるとよい。
■焦げを食べると癌になる?
焦げを食べると癌になると言われるが、これは全く、根拠ないデマである。
国立がんセンターのがんを防ぐ12か条のうちに「焦げた部分は避ける」とあったので、この説が常識となっているが、鼠を使った動物実験で、60kgの人間に換算して、1日1tに相当する焦げを食べさせても癌にならなかった。この実験結果より、焦げを食べても癌にならないことが証明された。
以上で本日のお話しを終わります。ご清聴ありがとうございました。
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