平成19年度
熟年大学
第一回
一般教養公開講座
於:SAYAKA小ホール
平成19年5月17日
地球温暖化と私たちの暮らし
~大阪狭山市周辺の竹林活性化を考える~
NPO法人 アクティブエイジング 理事
野村 順一 氏
講演要旨 生活の利便性を求め続けた私達は有限な化石燃料を浪費し二酸化炭素の発生量は急増、衰えた自然の力で制御できず、地球温暖化は危険な方向に向かっています。 私達は3R(Reduce, Reuse, Recycle)を実践し、緑を回復させ子孫の未来を守りましょう。 |
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1.地球温暖化と我々のつとめ 地球の平均気温は、20世紀中に約0.6℃上昇したが、1990年代に最も激しく上昇した。二酸化炭素は、太陽から地球に受けた熱を、地球の外に放射しにくくする作用があり、空気中の二酸化炭素が増加すると、気温は次第に高くなる。中国、インド、東欧、アフリカなどの諸国が、先進諸国と同じように化石燃料を使用するするようになると、2100年には、気温がさらに5℃も上昇するといわれている。 現在、日本でも、真夏日の激増、集中豪雨、洪水、竜巻などの異常気象が多発し各地に被害をもたらしているが、欧米各国でも熱波の襲来や、大洪水、ロシアでは猛暑と旱魃で、日本の国土の6割にあたる面積の森林が焼失した。ヒマラヤ、アルプス、アンデスの氷河は後退しつづけ、北極の氷は4割も薄くなっている。中国の洪水も年々増大しつづけている。 太平洋や、インド洋のサンゴ礁で構成されている国々では、海面上昇による陸地の消滅の危機にさらされている。京都議定書の発効に伴い、日本では1990年の二酸化炭素排出量から6%を削減する約束であるが、現在すでに8%増加しているので、2012年までに14%の削減をしなければならない。政府が昨年定めた計画によれば、各種削減努力でマイナス6.5%、京都メカニズム(外国との取引)でマイナス1.6%、森林の吸収、活用でマイナス3.9%を達成するとしている。我々すべてが、省エネに努めるとともに、放置されてきた森林や竹林の活性化につとめる必要がここにある。 2.日本の竹林の現状 1970年までは、竹は日本人の身近な道具や建築の素材として、また筍は食材、竹の皮は包装材料になくてはならない天然の素材として活用され、竹林も充分な手入れを受け、生き生きとした緑とすがすがしい環境を提供していた。 その後素材としての竹は、量産に適したプラスティックやアルミニューム等に置き換えられ、たまたま見かける竹製品は近隣諸国からの安価な輸入品が殆んどで、筍も高級な料亭向けの食材以外は、中国からの加工食品が大半を占めている現状である。こうして日本の竹林は次第に放置され、多くの場所で誰も手を加えなくなっている この現象に更に拍車をかけたのが、国土総合開発計画ヤ宅地開発ブームであり、美しい竹林は分断され、工場建設用地や各種の道路に占拠され、丸裸にされて住宅が建ち並び、僅かに残った竹林は手入れする人もなく放置され、無残な姿をさらしている。 また、都市の外周や農村地帯の竹林も、人口の高齢化や兼業農家化に伴い荒れ放題の場所が多く、茶畑や森林への竹の増殖が著しく、竹は暴力的な侵入者として邪魔者扱いになっているのが現状である。 3.なぜ竹林活性化に着目するのか? ①竹の成長速度は極めて速い 竹は筍から数ヶ月で成竹に成長し5年後には老成する。木材に対して5倍以上の成長力を示す。適正に5年ものの伐採をして、竹材を有効活用する。 ②竹林は有用な製品を提供する 昔から竹細工は民芸的な要素が強く、さらに大量消費のためには、フローリング材、竹粉、繊維製品、有効成分抽出などがある。 ③竹林は災害防止、地球温暖化防止に寄与する 竹林は地震、水害、火災などに対しても防災効果が極めて高い。 竹林の純生産量は、年約18.7t/haである(井鷺氏)。年間約25tのCO2を吸収、約20tの酸素を放出する。また、竹炭の有効利用のあと地中に埋設することで地力増強とカーボンマイナス効果が期待できる。 ④竹林は緑と安らぎを与え、情操教育の場に利用できる すがすがしい緑と、逞しい成長力、管理された竹林は人間にやさしい。筍狩りや竹細工、竹の遊具での学習、竹炭づくりや歴史探訪などを通じて、大人と子どもが共に楽しめる空間を提供する。人と竹のつながりから、環境教育、情操教育への有効な学習の場を形成できる。 竹の活用いろいろ 竹炭の効用:消臭、水質改善、安眠枕、鮮度保持剤、シックハウス症候群対応などの生活環境改善 竹粉の効用:マルチング材、土質クッション材、竹粉浴剤、竹茶など 竹酢液の効用: 入浴剤、除虫剤、皮膚疾患改善、土壌改良など 竹抽出液の効用: 抗菌剤、抗酸化剤、消臭剤、鎮静剤 4.竹林の活性化の先端事例 高知県春野町では、年々増大する竹林の侵食を抑え、地域起こしを目指した竹林の有効活用を検討してきた結果、竹フローリング材、竹粉、竹抽出剤、燃料化などの用途に活路を拓き、産官学民のコンソーシアムを設立し、バイオタウン計画を進行中である。また、大阪では堺市の沖合い、新日本製鉄堺製鉄所の跡地の沖合いにある建設廃棄物の埋立て地100haで2003年から「共生の森ワークショップ」をやっている。これらの動きを見守りつつ、全国的な展開を検討していきたい。 何が言いたいかというと、私たち中高年者がボランティアを組織して、死んだ竹林を活きかえらせ活性化することによって、二酸化炭素の吸収に寄与し、日本の京都議定書で決めたことが守られないというような不名誉なことにならないよう、若い人にも協力を求め、家庭でも3Rをやりながら努力していきたいということ。 安倍内閣になって「美しい日本」がテーマになっているが、単なる「美しい日本」ではなく、「美しい竹林」をつくって、地球温暖化を守ろうではないか。 |