平成14度
熟年大学
第一回
一般教養公開講座

於:Sayaka小ホール
平成14年5月16日

 【中東問題を理解するたのキーワード

講師
関西国際大学
経営学部助教授

河村 朗 










中東問題は、非常に分かりづらい問題だとよく言われます。
今日は、その中東問題を理解するためのキーワードとして、

中東
アラブ
イスラーム
アラビア語
パレスティナ問題
石油
外国人労働
人口爆発
の8点を挙げてみました。

中東問題が何故解りにくいかのひとつの鍵は、正月は初詣、
結婚式はキリスト教、葬式は仏式というように、日本人は
いろいろな宗教をつまみ食いして日常を吾しており、中東の
一神教信奉とは相容れぬからでしょう。

そこで、まず、8つのキーワードのうちの中東、アラブ、
イスラームについてお話します。

まず中東とは地政学的な表現で、19世紀に世界を支配
していたイギリスからみた位置です。 インドを基点にして
イギリスとの中間にある場所を中東、インドよりさらに東を
極東と呼びました。 中東は従って、東のアフガニスタンから
西のモロッコ、北のトルコから南のスーダンまで、西アジアと
北アフリカを合わせてて21ヶ国を指します。

その中でアラブと非アラブに分けられますが、アラビア語を
母国語としている国をアラブといいます。

アラブはもともと遊牧民のベトウイン族をアラブと称しましたが
今は、中東21ヶ国のうち、アラビア語を母国語として使っている
17カ国であり、言語の異なる国は次の4カ国です。

アフガニスタン⇒パシュトウーン語
イラン     ⇒ペルシャ語
イスラエル  ⇒ヘブライ語
トルコ     ⇒トルコ語

さて、日本ではイスラム教と呼ばれるイスラームの意味は、
神に対する絶対服従であり、そのイスラームを信ずる教徒が
モスレムです。

アラビア語には、三つの語源があり、固有の意味を持ちます。
それは、
イスラーム、ムスリム、サラームであり、心が安らかになる、
安寧な気持ちになるという共通の意味合いを持ちます。

さて、そのムスリムの世界における人口分布ですが、
ムスリムが多いのは意外と中東地区ではありません。

インドネシア⇒パキスタン⇒中国⇒インド⇒バングラデシュ
⇒ナイジェリア⇒エジプト⇒イラン
です。

さて、イスラームの基本理念とは、
1.運命論的視点として、
   死後の世界を信じ、あの世が大事
   その為に神の行いに忠実に従う。
   神の導きの下でよい行いをし、5つ義務を守る
    1.信仰の告白⇒絶対唯一のムハマド信仰とコーラン
    2.礼拝⇒1日5回
    3.喜捨
    4.断食⇒ラマダン
    5.巡礼⇒メッカ巡礼
2.人間生弱説
    人間とは誘惑に負けやすい。弱い人間が砂漠の厳しい
    自然環境で生きてゆくためには、神の強い導きが
    必要。

イスラームの世界では、この人間生弱説を制度化した、
結婚制度が特徴です。

ちまり愛は永遠のものでないとする考えから、確かな愛に
基づく結婚より、確かなお金に依って契約書をつくり結婚する
と云う制度です。 従って結婚には、
前払い金⇒結納金と、後払い金⇒離婚をするときの慰謝料額
を決めておく契約があり、人間の弱さを突いた考え方が、彼らの
結婚制度にも生かされています。

パレスチナ問題(紛争中に付き省略)

石油

中東諸国21ヶ国のなかで、産油国は11ヶ国です。73年の
第一次オイルショックでは、一バーレル(159リッター)の石油
価格は40ドルまで上がりましたが、現在は20数ドルです。

産油国の経済は、この国際石油価格に左右されますが、
世界の石油埋蔵量の66%はペルシャ湾岸5カ国の、
イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、UAEに集中します。 
従って、日本は今後もこの地域に依存せざるをえないのです。

当然ながら、莫大な国際石油収入が確保されているので、
社会資本、つまりインフラストラクチャーの整備により、
空港、港湾、道路、病院など、すばらしい国民還元を
達成してますが、その石油収入を使う時、
どうしても外国人労働者に頼らざるを得ませんでした。

そのために第一次オイルショック以来、
急速に外国人労働者が急増しました。

ところがここに来て別の問題点が発生します。
もともとアラブ諸国では、多産多死でありましたが、医療水準が
上がることにより、死亡率が減少しました。 にも関わらず
多産の国民的習慣は変わらず、多産少死による、人口増が
顕著となったのです。

増えた人口には、雇用が必要で、これが外国人労働者に
影響をおよぼしています。 つまりこれがサウジ化と
云われている、外国人労働者をサウジ人に代える雇用拡大化
政策です。

これで8つのキーワードについてお話しましたが、
今後の展望と言いますと、中東経済は依然として、原油価格の
動向に影響されています。 これが今後の経済開発に
どのような影を落とすのか、また、非産油国も産油国も
外国人労働者、援助、投資などの問題点を通して、
両者とも石油収入に依存して行くことには変わりないのです。

日本経済と中東を考えるとき、わが国の一次エネルギーの
50%は、原油であり、その85%を中東諸国から輸入しています。

そのように中東とは深い関係でありながら、
日本は中東をあまり深く理解していないといえます。 
その為には、更なる相互理解が必要です。
    
 
 
  この花は、司会の川口さん自作の
  カレンダーの4月の表紙を飾る絵です    
   

受講生の皆さん、
ご出席ありがとうございました。
第1回一般教養公開講座の
ご出席率は
86.5%でした。